奇麗に雪化粧した富士山。山梨では、人気撮影スポットに外国人観光客が押し寄せマナー違反が問題になっています。一方、静岡・富士市では、観光スポットとして整備を進める動きも…現状を取材しました。
「コンビニ富士山」。ことし、新語・流行語大賞にノミネートされた理由は…。コンビニの屋根の上に世界遺産の富士山が乗ったように見えるとSNSで話題になったから、だけではなく。
(記者)
「あぁ赤信号なのに渡っていきましたね危ないな」「危ない危ない」
(記者)
「あぁ~危ない危ない」
写真を撮るために集まる観光客の“マナー違反”と。町があの手この手で講じた、数々の対策。
(台湾から来た観光客)
「数か月前は、大きい黒い幕で隠されていたのを覚えています」
(近隣住民)
「問題になってのノミネートだったので、もうちょっといいイメージで入りたかった」
町は、5月、路上に集まる人を減らすため、富士山が見えなくなる高さ2.5メートルの黒い幕を路上に設置。ところが、わずか1週間ほどで、幕に穴が開けられる事態に。7月には、より編み目が細かく丈夫で、景観に配慮した「茶色い幕」に交換。8月、台風7号の対策のため3か月ぶりに幕を取り外すと…。大きな混乱がなかったことから、“幕がない”状態を試験的に続けていました。しかし、先週、訪れると。
(記者)
「歩道は大勢の観光客で埋め尽くされています」「歩くところもないですね…」
冬になり、雪化粧した“コンビニ富士山”が見えるためか…幕がない路上は危険な撮影スポットに逆戻り。
(記者)
「あぁ通るのもひと苦労ですね、ソーリー ソーリー」
警備員が、写真を撮りに来た人を午前10時から数えたところ、たった40分ほどで。
(警備員)
「いま123人になってるよ」「天気よきゃあ1000人ぐらいいっちゃうんじゃない」
人が増えれば、警備を休む間もなし。
(警備員)
「あぁ~次(渡る時は)横断歩道ね」「あぁ~横断歩道 横断歩道」「あぁ~危ない危ない」
車道への危険な飛び出しがたえず。
(記者)
「あぶない(車道に)出てます」
(警備員)
「おーいそこダメダメダメだよここー」
車道に出て、車とスレスレの距離で撮影する人まで。車道を渡って撮影していた人に危険だと伝えると。
(中国から来た人)
『中国人だから…』
(記者)
「道路危ないらしくて渡るの」
(中国から来た人)
「横断歩道…」
(記者)
「横断歩道はいいんですけど…」
地域住民には大きな迷惑がかかっています。
(近隣住民)
「ヒヤリすることはあるよね」「運転してて(観光客が)信号無視したりね」「そんなことやってると、そのうち交通事故があると思う」
あの路上を通りたいのに通れず…。“遠回り”を余儀なくされる人も。
(近隣住民)
「よけてくれないでしょ」「こっちからこうくるっと回る」「毎日富士山がきれいでしょう富士山ばっか映してるじゃない」
振り出しに戻った“マナー違反”。町は、横断歩道の色を白と緑に変更して目立たせ、コンビニと車道の間に柵を設置する方針です。幕を再び設置することは現状考えていないということです。
そして、外国人が多く訪れる富士山写真スポットは富士市にも…。橋に向かう階段入り口の歩道には、外国人観光客20人くらいが並んでいます。国道に架かる「夢の大橋」です。
(外国人客)
Q.どこから来た?
「中国からです」
橋の階段から富士山を上ったように見える写真がとれると、海外の有名インフルエンサーが配信したことがきっかけで人気に火が付き、2023年11月ごろから、多くの外国人観光客が訪れていて、今では、富士山が見える日は行列が途切れることがありません。
(外国人客)
Q.ここのスポットは有名なのか?
「有名です」
Q.どうやって知ったのか?
「中国のSNSを見て」
しかし、この場所では。
(記者)
「あっ、縁石に上ってポーズをとっています。すぐ横で車が走っているので、あぶないです」
5月には、道路を横断し中央分離帯で撮影する外国人や…。
(記者)
「ドローンです。ドローンが飛んでいます。道路の真上で飛行しています」
さらに、ごみのポイ捨てなどマナーの悪さが目立ち、富士市も頭を悩ませていました。そこで、市が考えたのが、この状況を逆手にとる観光スポットとしての整備。高さ1.8メートルのフェンスを設置し、中央分離帯に行けないように完全に封鎖。道路管理者の国が駐車場を増設したほか、富士市も仮設トイレの設置し誘導員も配置するなど、6月の補正予算で市は740万円を投入し、整備を進めたのです。
そして、現在はというと。奇麗な列で並ぶ観光客。さらに少しでも危ない行為があると…
(警備員)
「中に入って!道路は危ないから」
また、大声で話そうとすると、
(警備員)
「シーッ!(静かに)」
警備員がすぐに注意します。市によりますと、夏ごろは一日300人ほどが訪れていましたが、雪化粧してからは観光客が増え、今では、多い日には2倍の600人が訪れる名所になったといいます。市では、キッチンカーを設置する実証実験も行っています。
(富士市交流観光課 松村 岳典 課長)
「橋だけではなくて、市内を回遊する仕組み、情報発信を強化して、他にも富士山を楽しめるところが富士市にはいっぱいある、おいしい物を食べられる所がいっぱいあると情報発信していきたい」
(ワゴンカフェ なごみ)
「ただ来てもらうだけでなく、その土地のものを食べてもらっ たり知ってもらうのはありがた い、少しでも満足して帰ってもらいたい」
市では押し寄せる外国人観光客をそのまま帰してしまうことなく、市内を回遊してもらう工夫や、買い物をしてもらうことで、地域への経済効果をもたらせるよう試行を重ねていきたいと話しています。
2024.12.10