1966年、静岡・旧清水市で一家4人が殺害された事件をめぐり無罪が確定した袴田巌さん。9月、再審で言い渡された判決で 静岡地裁は捜査機関による証拠のねつ造を認定しました。その1つが、取り調べでの袴田さんの自白です。
(当時の取り調べ・捜査員)
「袴田お前が犯人だ。おれは犯人の袴田と話をしている」
逮捕から一貫して無実を訴えていた袴田さんですが…。
(当時の取り調べ・捜査員)
「君の現在の心境はどうなんだ」
(袴田 巌さん)
「大変恐ろしいことをやったと思っています」
静岡地裁は、「黙秘権を実質的に侵害し苦痛を与えて供述を強制する非人道的な取り調べ」だったと指摘し、実質的にねつ造されたものと認めました。
もう一つは、最大の争点犯行着衣とされていた「5点の衣類」。
事件から1年2か月後にみそタンクの中から見つかったもので袴田さんの死刑判決の決め手となった証拠です。
裁判所は「1年以上みそ漬けされた場合血痕に赤みが残るとは認められない」捜査機関による加工の後、みそタンクに隠されたと指摘しました。
さらに、袴田さんの実家から発見された「ズボンの共布」についてもねつ造を認定し捜査機関を批判しました。
当時の捜査について県警の元捜査員は…。
(元捜査員)
「逮捕するまでの一か月の間に煮詰まっていった。最初から袴田ではない。いろいろな捜査をやる。消えていったの。最後に説明つかない人が残る。袴田がどの部門でも、袴田は全部残った。あくまでも彼だと」
事件当時の警察の捜査記録には、取り調べについて、こう記されています。
(当時の捜査記録内容)
『犯人は袴田以外にはない 袴田に印象づけることにつとめる』
ねつ造が認定された判決を受け、独自の事実確認や検証を進めていた県警と検察。
12月、県警のトップである津田隆好本部長は、県議会の代表質問で刑事部長以下20人の体制で事実確認をしていると話し、当時の捜査記録から捜査の経緯や実態の確認を進めていることや、存命する当時の捜査員、被害者が経営していたみそ製造会社の元従業員などに聞き取りを行っていることを明らかにしました。
(県警 津田 隆好 本部長)
「58年前の事件で過去の捜査とはいえ、やはり、いろいろ反省すべき点は」「いくつかあるのかなと思っております」
また、この“検証”に対して、弁護団は、証拠のねつ造について検証するよう県警に申し入れていました。
(弁護団 小川 秀世 弁護士)
「判決で、違法行為が」「はっきりと認定された部分がいくつもあるわけですよね。そういうことについて、改めて県警でも確認をしたうえで、それに対する対策を真剣に考えていただきたい、それでないと、袴田事件が何の成果も得られなかったということになりかねないですから」
2024.12.26