教員の働き方改革が求められる中学校の部活動が大きな転換期を迎えようとしています。学校から地域へ、地域クラブ活動の”今”を取材しました。
平日の放課後。中学校の体育館で男子バレー部が部活動に励んでいました。活動は平日3日、休日1日の週4日。教諭が顧問として立ち会い指導しています。部活動をめぐっては、少子化や教員の働き方改革のため国が学校単位の運営から地域のスポーツクラブや団体に移行する“地域移行”を進めていいます。
静岡市の難波市長は2025年1月の定例会見で、2年後の2027年夏に中学校の部活動を廃止して地域に移行すると発表しました。移行後は市が民間事業者などに委託する「市営クラブ」か、既存のクラブを市が認定する「認定クラブ」に生徒が所属して活動する形を想定しています。
部活動から地域クラブへの移行の転換期にあたるのは、現在の小学校4年生~6年生。現在の小学6年生が中学3年になる2027年夏の大会が終わると「地域クラブ」での活動に切り替わります。部活動がなくなることについて顧問の教諭は。
(清水興津中・川口貴大先生)
「部活動をやっていてやりがいはあると思うが、部活動に割く時間が多くなっているのも事実。授業の研究だったりとか、教材の準備とかそういったところに時間を回せるのかなと思う」
市内では地域クラブ移行に向けて実証実験が進められています。市が民間企業にクラブの運営を委託して“地域クラブ”の体験会を各地で開催しています。この日は清水区内の3つの中学校が集まりバスケットボールの練習を一緒に行いました。
(フジ物産 経営企画部・山瀬直子さん)
「清水区を担当していてバスケとアルティメットを興津中と清水第四中学校を会場にやっています」
指導するのは教員ではなく“外部”の指導者。地域のスポーツ振興事業などを手掛ける総合商社「フジ物産」のスタッフであり、Bリーグ・ベルテックス静岡のキャプテンをつとめたこともある元プロ選手・大澤歩さんです。
(講師・大澤歩さん)
「バスケというスポーツを通じて、他校の子たちと触れ合ってくれる機会が増えたらいいなという思いで引き受けた」
去年11月から行われているこの体験会。参加している生徒は…
(清水庵原中 2年生)
「基礎からしっかり試合に使えるプレーまで教えてくれるのですごくいい」
(興津中 2年生)
「やっぱりバスケだけに集中できるのでいいなと思う」
学校の部活動から移行し、地域で子どもたちのスポーツ環境を支えようという地域クラブ活動。大澤さんも新たなカタチに期待しています。
(講師・大澤歩さん)
「ただバスケットをやりたいとか、スポーツをやりたいとか、体を動かしたいという子たちの受け皿でもあると思う。クラブチームだけじゃなくて地域クラブというものが、静岡県に根付いていくのはいいことだと思うし、その一端を担うような存在になりたい」
静岡市は2025年夏ごろまでに種目や活動費など「地域クラブ」の方向性について発表する予定です。
一方 県内でもいち早く部活動の地域移行に力を入れている掛川市では、2026年夏までに学校の部活動から“地域クラブ”へ完全移行します。
(掛川市の担当者)
「掛川市では中学生になる子どもたちに向けて、このようなリーフレットを渡して説明をしています」
市内の地域クラブを紹介するリーフレットです。学校の部活がなくなるため、入りたい地域クラブを見つけてもらおうと、現在の小学4年から6年生に配布しました。
夜に中学校のグランドで活動していたのは2024年、春に結成されたサッカーの地域クラブです。地域のサッカー少年団のコーチが指導しています。掛川市南部の中学校にサッカー部がなかったことから立ち上げられ現在、1年生を中心として活動しています。
(生徒)
「中体連の大会にも参加できているし、人数は少ないけど練習も充実している。自分の技術も確実に上がってきていると実感する」
掛川市は市内のスポーツ協会や文化財団の協力を得て、バトミントンやソフトテニス、文科系では美術や料理など合わせて43の公認クラブを立ち上げています。地元の有志が指導者として活動していて指導者への講習も行っています。
(掛川市教委 教育政策課 水谷忠史 課長)
「子どもの接し方や安全管理などを研修会でやっている。これまで100人以上が受講している。地域の子どもは地域で育てるという考え方を持っていただきたい」
指導者の多くは日中、仕事をしていることから活動は主に夜。市はスキマ時間の“放課後の夕方”を活用できないかとスポーツインストラクターによる運動教室やヨガ教室などを試験導入するなど、移行後を見越した取り組みを行っています。
(掛川市教委 教育政策課 水谷忠史 課長)
「子どもたちの選択の幅を狭めたくない。やりたい競技がないと閉ざされてしまう」
掛川市では子どもたちからアンケートを取り、地域ごとどんなクラブが必要か検討を進めていて、2025年秋ごろには最終の実施案を発表する予定です。一方で、地域クラブ移行をめぐっては指導者や実務担当者などの確保が課題となっていて、自治体は急ピッチでの対応を求められています。
2025.02.24