一家4人が殺害された事件の再審=やり直しの裁判で無罪が確定した袴田巌さん。死刑囚ではなくなり“真の自由”を得た袴田さんに“変化”はあるのでしょうか。袴田さんの日常に密着させていただきました。
11日、午後2時半ごろ、浜松市内の自宅を出た袴田巌さん。
(袴田 巌さん)
「どうも」
(徳増 ないる キャスター)
「巌さんこんにちは」
(巌さん)
「はい」
(徳増 ないる キャスター)
「徳増ないると申します」
支援者と出かける日課のドライブに同行させてもらいました。
(徳増 ないる キャスター)
「きょうは、巌さん、体調はいかがですか?」
(袴田 巌さん)
「体調はいいですよ」
(徳増 ないる キャスター)
「良かったです」
向かったのは自宅近くの“お寺”。
袴田さんは、半世紀近くにわたる獄中生活によって精神がむしばまれ、時おり「妄想」の世界に入り込む「拘禁症状」を患っています。
(徳増 ないる キャスター)
「巌さん、コイがたくさん泳いでいますけれど、ここにはよくいらっしゃるんですか?」
(袴田 巌さん)
「ああ、たまに来るんだけどね」
袴田さんにとって、ドライブはただの“散歩”ではなく市内をパトロールする「仕事」。支援者によると無罪確定後、問いかけに対する「言葉数」が少し増えるなど妄想が“薄く”なったようにも感じられるといいます。しかし、その一方で、最近でも、購入した飲み物に「毒が入っている」と話すなど、「拘禁症状」が強く出るときもあり、深く負った心の傷は回復から程遠いのが現状です。
58年前の1966年、旧清水市で起きた一家4人殺害事件で死刑囚となった袴田さん。48年後に再審開始が認められ「釈放」されましたが、2024年9月に無罪が確定するまで、さらに10年の月日がかかりました。この間、弟の無実を信じて支え続けてきたのが姉のひで子さんです。一番近くで袴田さんを見てきたひで子さんに、無罪確定後の変化について聞いてみると…。
(徳増 ないる キャスター)
「巌さんの様子は無罪が確定してからどうですか?」
(袴田さんの姉・ひで子さん)
「多少はわかっているようなのね。だけどやっぱり妄想の世界に行ったり来たり、これで分かったのかなと思うとまた変なことを言うのよ。それは妄想の世界でね。48年の拘禁が理由だと思うけれど、やっぱりなかなか治らない」
ひで子さんは、弟の無罪が確定した後も、えん罪被害者の救済に向けて活動を続けています。私たちの取材でも、審理の長期化が指摘されている「再審制度見直し」への強い思いを訴えました。
(徳増 ないる キャスター)
「来年2025年も、もうすぐやってきますが、再審の見直しも含めて来年どんな1年になるといいと思いますか?」
(袴田さんの姉・ひで子さん)
「来年中ぐらいには、再審法の改正ぐらいね、やってもらわないと、巌が48年刑務所に入っていた価値がない。何のために入っていたのかということですよ。巌は頑張って生きた」「死にもしないで頑張って出てきた。おかしいことはおかしいですよ。おかしくても、命があって出てきたことが大事だと思う」
2024.12.12