2024.07.17

土用・丑の日を前に高騰続くウナギと最新量産技術の現状を取材…なんとか“お手頃”にならないの?(静岡)

ニュース 梅雨明けも目前となり、この時期、食べたくなるのがウナギですが、近年は価格が高騰して高級食材となっています。その切実な現状と、今後ウナギがお手頃になるかもしれない最新技術の研究を取材しました。

梅雨明けも目前となり、この時期、食べたくなるのがウナギですが、近年は価格が高騰して高級食材となっています。その切実な現状と、今後ウナギがお手頃になるかもしれない最新技術の研究を取材しました。

こうばしい匂いに食欲をそそられるウナギ。

(客)
「おいしいですよ」「大好き」「旅行の帰りにね、せっかく(浜松に)来たから」「今の時期特にね、食べたい」

もうすぐ土用の丑の日ですが、2024年の夏は7月24日と8月5日の2回あります。しかし、この一番のかき入れ時を前に、ウナギ専門店を悩ませていることが…

(うなぎ藤田 藤田 将徳 代表取締役)
「ウナギの価格自体も上がっていますが、ほかの原油高騰だったり人件費の高騰だったり、特に人手不足が続いていて」

高止まりするウナギの仕入れ価格と物価高のダブルパンチ。それでも企業努力で耐えていましたが、それも限界を超え17日から値上げする苦渋の決断をしたのです。それにより「うな重」はついに5000円を超える値段に!

(うなぎ藤田 藤田 将徳 代表取締役)
「値段は少しずつあがってしまっているのですが」「お客様に満足していただけるように長く変わらず営業しているので、夏の暑い時期にウナギを食べて精を付けていただければと思っている」

そもそも、なぜウナギの仕入れ価格が高騰しているのでしょうか?“ウナギ養殖発祥の地”と言われる浜名湖にある養鰻場に行ってみると…。

(海老仙 加茂 清一郎 代表取締役)
「浜名湖全体の養殖業をやられている方、みなさんが日本一のおいしいウナギを作ろうと」「研究をして努力しています」

ウナギに対する熱い思いがある一方で、こちらにも、うなぎを取り巻く厳しい現実があります。

(海老仙 加茂 清一郎 代表取締役)
「いまはもう、白いダイヤというくらい値段が高くなった」「値段が高くなったのはシラスウナギが捕れなくなったから」

私たちが普段食べる「養殖ウナギ」はウナギの稚魚である「シラスウナギ」を海で取って育てています。しかし、そのシラスウナギの漁獲量は年々減少傾向。それにより価格も高騰し、20年前は1キロ25万円だったのが、現在は10倍の250万円にまで跳ね上がっています。さらに、漁業法が改正され、今期からシラスウナギを県外の業者にも販売できるようになったため価格競争が起こり、県内の取引価格は2023年の約1.5倍となっているといいます。

(海老仙 加茂 清一郎 代表)
「シラスウナギも高いがそれにかかる餌代とか、光熱費、その他いろんな経費が高くなっているので当然ウナギを出荷するときにはその経費がかかってきてしまうので、僕ら養殖をしている企業はちょっと大変。ことしは特に大変」

このような状況に、浜名湖ウナギの関係者は、資源回復を目的としたクラウドファンディングを8月1日から始める予定で、その資金でウナギを放流し、資源を守ろうとしています。さらに、天然のシラスウナギに頼らない卵からシラスウナギを育てる「完全養殖」も熱い注目を集めています。

その研究が、南伊豆町にある国の「水産技術研究所」で行われています。実は、すでに「完全養殖」の技術は確立していますが、まだ実用化には至っていないのです。

(水産技術研究所 里見 正隆 研究員)
「技術的にはそこまで来ているんですけれども、皆様の口に届けようと思うとかなりの数のウナギを育てないといけない」「そうなると研究レベルの量産では足りなくて、商用レベルの大量生産が課題」

ここで研究しているのが、いま一番求められているシラスウナギの量産技術の開発です。これが、この施設で人工的に育てられた「シラスウナギ」。これを大量に育てるることができれば、ウナギも手頃な価格になる可能性がありますが、そこにはまだ課題があるといいます。

(水産技術研究所 樋口 健太郎 研究員)
「こちらがうなぎの親を飼育している施設になります」「これが今週卵を産む予定のメスウナギになります」

ウナギは通常の飼育環境では卵を産むことはありませんが、ここでは2002年に世界で初めてウナギに産卵させ、その卵からシラスウナギまで育てることに成功しました。そして、さらに難しいのが孵化させてから「シラスウナギ」に成長させる過程。平らな姿でひらひら動いているのが「仔魚」というシラスウナギになる前の状態ですが、天然のウナギは約2400キロ離れたマリアナ諸島の近くで産卵して孵化するため、仔魚の詳しい生態はわかっていないのです。

(水産技術研究所 里見 正隆 研究員)
「こちらがうなぎの仔魚(赤ちゃん)がいる水槽室になります」「こちら明けますと真っ暗です」「ウナギの赤ちゃんは光を嫌うので」「天然環境と同じようにゆっくりと水流に乗っかって泳ぐように工夫をしている」

足元を消毒をして、中へ入ると…。

(水産技術研究所 里見 正隆 研究員)
「ここはですね、実験用に仔魚を飼っている水槽でこの水槽には260日くらいたったウナギの赤ちゃんが入っている」

たくさんの水槽の中を泳ぐ、ウナギの赤ちゃん。この水槽では1日5回、魚粉などをブレンドした特別なエサを手作業で与えています。

(水産技術研究所 里見 正隆 研究員)
「ペースト状にわざわざしてあって、ウナギが食べやすくなっている」「エサをあげると水槽が汚れてしまうので毎日空の水槽に移して、からの水槽を毎日洗う」「黒潮に漂っているのできれいな水を好むということと、エサは栄養が濃いので腐敗しやすいのでできるだけ天然環境に近づけるために」

このように手間をかけてシラスウナギに育つまで約300日。そのコストが問題なのです。

(水産技術研究所 里見 正隆 研究員)
「シラスウナギを作るのが数万円と言われていた時期に比べると、いまは1800円くらいまで落ちてきている」「着実にコストダウンは進んでいる」

高騰している天然のシラスウナギでさえ高くて1匹600円のため、完全養殖の実用化技術が確立され、シラスウナギが安く安定的に供給されることが期待されます。

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