2025.01.09

【解説】2025年 石破首相の前に立ちはだかる“3つの壁”とは?政治ジャーナリスト・青山和弘氏が詳しく

ニュース 2025年も厳しい政権運営が予想される石破首相ですが、少数与党の石破政権に立ちはだかる「3つの壁」があるといわれています。政治ジャーナリスト・元日本テレビ官邸キャップの青山和弘氏に、この「3つの壁」について詳しく解説していただきます。

(スタジオ)
(高山 基彦 キャスター)
2025年も厳しい政権運営が予想される石破首相ですが、まずは、主な政治日程を見ていきます。

・1月20日、アメリカで第2期トランプ政権が始動します。

・そして、通常国会は1月24日に召集される予定です。

・2025年度予算は年度内に成立できるのかが注目されます。

・夏には東京都議選・参院選と…2025年も重要な選挙が続きます。

こうした中で、少数与党の石破政権に立ちはだかる「3つの壁」があるといわれています。

1つ目の壁は「2025年度予算の成立」です。3月末までに予算案を成立させないと新年度から政策が実行できなくなり、政府の機能が停止する恐れもあります。

2024年の臨時国会では、国民民主と維新の協力を取り付け何とか補正予算の成立にこぎつけましたが、2025年度予算案への協力については、めどは立っていません

国民民主は103万円の壁を「178万円」にすることを求め、自民・公明を引き続き揺さぶり続けています。また、維新は、教育無償化を訴え、与党と協議をしていますが、党内では、与党との距離が近づくことへの反発が出ていて、どのように協力を取り付けるのか注目が集まっています。

(津川 祥吾 アンカー)
来年度予算ですが、予算の中身ももちろん重要ですが、これが成立しないとなると、これはこれで国民の生活に大きな影響が出ます。青山さん、予算の成立…見通しはいかがでしょうか?

(政治ジャーナリスト・元日本テレビ官邸キャップ 青山 和弘さん)
とにかく石破政権としては予算が成立しないと行き詰ってしまいますから、なんとしてでも成立させようということで、交渉するわけですね。で、石破さんは3枚のカードを持っていて…。その1枚目は国民民主党ですね。「103万円の壁」。そして日本維新は「教育無償化」。それと、やはり立憲民主党も、石破さんの予算案に賛成してあげてもいいよ…と、もちろん妥協があれば…なのですが、そいういうことを言っている幹部もいるんです。この3枚のカードを駆使しながら、石破さんは乗り越えようとしていくわけなんです。

野党側としても、やはり政策的に自分の主張を通したいという思惑も、参議院選挙に向けてありますし、石破さんをここで追い込んでしまった方が、実は自分たちにとってマイナスではないかという思惑もあってですね、ここは石破さんがカードを駆使しながらなんとか乗り越えられそうだなというのが現在の状況なんです。

ただ、やはり通常国会、予算委員会は長く続きますから、この間に、いろいろなスキャンダルが出てきたり、失言が出てきたり、いろいろなことが、閣僚のクビが飛んだり、いろいろあると…これはなかなか難しくなる可能性もあるわけです。なので、通常国会の審議を見ながら、見通しを、みていくということになります。

(高山 基彦 キャスター)
2つ目の壁は、通常国会の会期末の「内閣不信任決議案」の壁です。これまでは、通常国会の会期末に野党が提出し否決されてきた内閣不信任決議案ですが、少数与党の国会では、野党が一致結束さえすれば可決する可能性もあり、野党側の「伝家の宝刀」に一変しました。

内閣不信任案が可決された場合、石破内閣は10日以内に“総辞職”するか“衆議院を解散”しなければなりません。この不信任案をいつ提出するのか?それともしないのか?これにも注目が集まります。

(津川 祥吾 アンカー)
内閣不信任案決議ですけれども、当然、野党側も(案を)出すことができますけれども、出す以上は当然、大義がなければいけないのですが、一方で、これまでどのような大義で出してきたかというと、どちらかというと恒例行事、しかも否決されるのが前提のポーズになっているようなところがありましたが、今は、その状況は大きく変わりました。さあ、この不信任案決議…どうなりますでしょうか?

(政治ジャーナリスト・元日本テレビ官邸キャップ 青山 和弘さん)
これまでの恒例であるとですね、ポーズもあったのですけれども、特に参議院選挙が近いですから、対決姿勢を示すために常に出してきたのですね。ただ、今回は、これ、もしも通った場合は、高山キャスターからご紹介があったように、総辞職か解散、しかも石破さんは、この年末年始に『解散だってあるぞ』と、ある意味、野党にプレッシャーをかけているわけですね。つまり、『通すのだったら解散されても仕方ないのだぞ』ということなんです。そうした中で、先ほど予算の中でも言いましたけれども、野党は石破さんを追い込むよりも、石破さんのまま参議院選挙へ行った方が、今、石破政権って…そんなに支持率は高くありませんから『勝てるのではないか』という思いもあるのです。そういう思いが強まってきて、しかも石破政権にそんなに大きな失点が無かったとすれば、(不信任案を)出さない可能性もあるんですね。出さない理由はいくらでも付けられるんだし、まだ選挙から半年も経っていませんからね…そういう可能性もある。

ただ、一方で、何か、この石破政権に不備があった場合には、出さないと格好がつかないというといのもあるので、これも、今後の展開次第でどうなるかというところなんです。

(高山 基彦 キャスター)
そして最後、3つ目の壁は、夏に予定されている「東京都議選挙」と「参院選選挙」のダブル選挙です。2つの選挙が同時に行われるのは12年に一度。選挙の時期が接近しているため、先行する都議選の結果が、そのまま参院選の結果と連動することが多いといわれています。過去を振り返ると、2013年は民主党からの“政権奪還”直後、2001年は小泉純一郎フィーバーで、自民党が都議選・参院選ともに勝利をおさめています。一方、1989年は都議選で、野党の社会党が議席を3倍に増やし、自民党は大敗。直後に行われた参院選でも惨敗し、自民党は結党以来初めて参議院での過半数割れへと追い込まれました。

(津川 祥吾 アンカー)
自民党が負けたのは36年前、平成元年の選挙で、当時、「リクルート事件」があったところですから、ちょっと今とは雰囲気が違うかなとは思いますが、この「ダブル選挙の年」、これはどのようにみますか?

(政治ジャーナリスト・元日本テレビ官邸キャップ 青山 和弘さん)
このように大きく負け込む可能性があるわけです。なので緊張感があるのですけれども、自民党内には、やはり石破さんのまま、参議院選、都知事選に突入すると厳しいという見方は実は根強くあるわけです。特に、改選を迎える参議院議員、その人たちがどう動くかが今後の展開次第なんです。

2001年の小泉さんフィーバーの時というのは、実は、直前まで森さん、森喜朗さんが首相で、支持率が10パーセント台ぐらいまで落ちたので、もうだめだということで、森さんに退陣してもらって、小泉さんが代わってフィーバーで勝ったということなんです。ですから、今の自民党の参議院議員などは、これをねらっているんです。石破さんに退陣してもらって、新しい首相でフィーバーを起すと。ただ、石破さんは、そんなに森さんほど支持率が低くない、さらに、小泉さんみたいなフィーバーを起せる候補者が自民党内にいるのかという意味では、ちょっと状況も違うのです。なので、石破さんが、ここから6月、7月までにどれくらいの支持率を維持できるかが…このダブル選挙を石破さんのまま迎えるかどうかの大きな“試金石”になるわけです。

この「3つの壁」ともに、とにかく、これから通常国会の流れを見てみないと、石破さんが乗り越えられるかわからないという意味で、ことしの政局は非常に“読む”のが難しい状況になっています。

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