(袴田 巌さん・88歳)
「長い闘いがございましたが、私もやっと完全な無罪が実りまして」
2024年、逮捕から58年を経て無罪が確定した元「死刑囚」・袴田巌さん。午後になると散歩に出かける生活は変わりません。12月、その散歩に同行させてもらいました。
(徳増 ないる キャスター)
「きょうは巌さん体調はいかがですか?」
Q.体調はいいですよね
(袴田 巌さん)
「体調はいいですよ」
向かったのは近くの“寺”。
(徳増 ないる キャスター)
「きょうはすごくいい天気ですね」
(袴田 巌さん)
「ああ、そうだね」
(徳増 ないる キャスター)
「このお寺に来るのは久しぶりですか?」
(袴田 巌さん)
「まあ、そうですね」
車を降り、境内を散策。
(徳増 ないる キャスター)
「巌さん、コイがたくさん泳いでいますけれど、ここには、よくいらっしゃるんですか?」
(袴田 巌さん)
「ああ、たまに来るんだけどね」
58年前、旧清水市で起きた一家4人殺害事件で死刑囚となった袴田さん。48年後に再審開始が認められ拘置所から「釈放」。浜松市の自宅に移ると、“自由”をかみしめるかのように、長いときには1日5時間も街を散歩。袴田さんにとって散歩は、「街を守るためのパトロール」。
(袴田 巌さん・2018年当時)
Q.巌さんきょうはどこに行くんですか?
「きょうはね…ローマに行くんだ。ローマ王になるんだ」
半世紀近い獄中生活で、時おり「妄想」の世界に入り込む「拘禁症状」が。数年前からは、車で出かけ、支えられて歩くことが多くなりました。無罪確定後は、「言葉数」が少し増えるなど小さな変化が見られたといいますが、その一方で、飲み物に「毒が入っている」と拘禁症状が強く出ることも。無表情のまま笑顔はなく心の傷はとても深いようです。袴田さんが逮捕されてから半世紀以上、一番近くで支えてきたのが姉のひで子さん。
(徳増 ないる キャスター)
「巌さんの様子は無罪が確定してからどうですか?」
(袴田さんの姉・ひで子さん・91歳)
「多少はわかっているようなのね。だけどやっぱり妄想の世界に行ったり来たり」「48年の拘禁が理由だと思うけれど、やっぱりなかなか治らない」
“えん罪”により人生を滅茶苦茶にされた袴田さん。ひで子さんは同じような人がもう出ないように、「再審制度」について、証拠開示や審理の長期化など見直すように訴えます。
(袴田さんの姉・ひで子さん・91歳)
「来年中ぐらいには再審法の改正ぐらいね、やってもらわないと、巌が48年刑務所に入っていた価値がない。何のために入っていたのかということですよ。巌は頑張ってきた」
こうした声を受け、法務省は2025年・春にも、「再審制度」の見直しを検討することに。
取材の最後、袴田さんにこんな質問をしてみました。
(徳増 ないる キャスター)
「もうすぐ来年ですが、どんな年にしたいですか?」
(袴田 巌さん)
「…」
目を閉じると、言葉を発することはありませんでした。
(徳増 ないる キャスター)
「巌さん、ありがとうございました」
(袴田 巌さん)
「あぁ、どうも」
2024.12.27