旅の醍醐味がまた一つ消えていきます。東海道新幹線の「のぞみ」と「ひかり」で行われてきた「車内ワゴン販売」が、31日の最終列車をもって終了します。
31日、新大阪駅ではいつものように「車内ワゴン販売」の商品を入れ替える様子が。見慣れた風景ですが、31日で見納めとなりそうです。別れを惜しむ声は静岡駅でも。
(利用客)
「きょうで終わり?弁当、お土産、安倍川もちとかお土産で、コーヒーとか寂しいですよね」
「アイスクリーム買いたかったけど買えなかった」「うわさではワゴン車のアイスが美味しいと聞いたことがあって、一度食べてみたいと思っていたけどチャンスを逃してしまいました」
旅人の思い出に寄り添ってきた東海道新幹線の「車内ワゴン販売」。1964年の東海道新幹線の開業と同時に弁当の販売が行われ、かつては週刊誌などを販売していたことも。その後、時期は不明ですが、現在のワゴンでの販売が始まり、昭和、平成、令和と3つの時代を駆け抜けてきました。しかし…。
「(車内販売で)買えないものも、いろいろなところで売っている」
駅の商業施設の充実にともない、近年は車内に飲み物や食べ物を持ち込む人が増え、コロナ前の2018年度時点で売り上げが2008年度から半減。パーサーの人手不足などもあり、終了に踏み切ったということです。一方、新大阪から西の山陽新幹線では、これまでの車内販売が継続されますが、JR西日本の社長は「維持していくのは難しい」と話し将来的な廃止も示唆しています。時代の流れで消えゆく車内販売。それでもパーサーにとっては…。
(JR東海リテイリング・プラス 川尻 真富果 チーフパーサー)
「70代の男性がお1人で乗車されていたが、ワゴン販売でお弁当とお茶を2人分買われた、お客様のテーブルに目を落とすと、男性のお客様と同じくらいの(年齢の)女性のお客様の写真が飾られていた」「思い出すとお客様それぞれのお顔が浮かんできて…」
亡き妻の分まで2人分のお茶と弁当を購入した乗客の姿が生涯、忘れられない思い出に。そしてこの時、乗客が追加で買っていたという"名物"が。
「ホットコーヒーとアイスクリームをご購入くださった」
ワゴン販売のアイスクリーム
「修学旅行でも友達と食べたりして思い出あるかなという感じ」
スプーンが刺さらないほどカッチカチ。SNSなどでは「シンカンセン スゴイカタイアイス」として知られています。中には"駆け込み"で購入したという人も。その硬さは変わらず…?
「硬かったです!」
11月1日からは、「のぞみ」の停車駅すべてに設置される自動販売機で購入ができるようになります。県内にアイスの自動販売機はありませんが、静岡駅では改札内にある売店で購入することができます。また、「こだま」以外のグリーン車の利用客は、スマートフォンなどで注文を受け付けるモバイルオーダーで引き続き購入できます。時代とともにおもてなしの形は少しづつ変わりますが、東海道新幹線は新たな一歩を踏み出します。
2023.10.31