2024.07.05

【橋げた落下】国道1号「静清バイパス」工事で起きた8人死傷事故から6日で1年…いま現場は?(静岡市清水区)

ニュース 静岡市清水区の国道1号「静清バイパス」の工事現場で、橋げたが落下し8人が死傷した事故から、7月6日で1年となります。なぜ、この衝撃的な事故は起きてしまったのか?この1年で、事故現場や安全対策、さらに工事全体の予定に変化があったのでしょうか?

静岡市清水区の国道1号「静清バイパス」の工事現場で、橋げたが落下し8人が死傷した事故から、7月6日で1年となります。なぜ、この衝撃的な事故は起きてしまったのか?また、この1年で、事故現場や安全対策、さらに工事全体の予定に、どのような変化があったのでしょうか?

5日、事故を忘れてはならないと関係者が集まり開かれた集会。

(静岡国道事務所 椎野修 所長 )
「事故を決して忘れず、この事故で得た教訓を関係する皆様全員でしっかりと心に刻み、事故を二度と起こさない強い決意の元、日々愚直に安全を追求し続ける事だと考えます」

(2023年7月・岡崎 謙一 カメラマン)
「静岡市清水区静清バイパスの上空です、建設途中の橋げたが落下し、下の道路を完全にふさいでいます」

2023年7月6日・午前3時ごろ、事故は、東名高速・清水インターにつながる国道1号線・静清バイパスの「立体化工事」の現場で起こりました。

この工事は、慢性的に発生する渋滞の緩和や災害に強い道路にすることを目的に、静清バイパスでは唯一、地上部分が残る2.4キロを高架化するため、2016年10月に始まりました。すでに8年も続く大プロジェクトですが、ドライバーからは立体化への期待の声が。

(トラックドライバー)
「朝晩は(渋滞が)ひどい 」「(立体化されて)渋滞が解消されれば仕事としても楽になる」「車が大きいため立体化された方が走りやすい」

この立体化により、渋滞が減り通行時間が短縮され、交通事故や騒音も少なくなることが見込まれています。その一部である「尾羽第2高架橋」の工事で、(事故当時)長さ63メートル、重さ140トンもある「橋げた」が地上9メートルから落下する大事故が起きたのです。この事故で橋の上で作業していた作業員2人が死亡、6人が重軽傷を負いました。当時、現場近くの住民は…。

(事故当時・近所の住民)
「地震よりもすごいガタガタガタガタ。家が壊れるかと思うくらいガタガタガタガタ…」

(事故当時・近所の住民)
「雷が落ちたのかなと思ったけどそうじゃなかった」

1年前のあの日、一体何が起きたのか?当時、現場では橋脚に仮置きされた橋げたを、横に11メートルずらす作業が行われていました。橋げたの一方には「セッティングビーム」と呼ばれる補助具が取り付けられた状態で移動作業が行われ、一度は土台の上に置かれましたが、予定の場所から20センチほどずれてしまったといいます。この“ずれ”を直すために、もう一度、橋げたを持ち上げようとしたところ、土台部分がバランスを崩し橋げたが落下してしまったのです。なぜ土台がバランスを崩してしまったのか?

140トンもの橋げたを移動させる危険を伴う作業にも関わらず、鉄製の部材をいくつも重ねて作られた土台が、それぞれしっかりと固定されていなかったり、さらに土台を水平に置くことすら徹底されていなかったりと、甘すぎる安全管理が原因とみられています。国の事故調査委員会も、土台をしっかり固定していなかったことを主な原因として挙げています。2023年12月、事故が発生した橋脚の上を取材した際には、橋げたが落ちた際にできた生々しい傷が残っていました。

(2023年12月・徳増 ないる キャスター)
「傷ついているように見えますが、これが落下したときの痕跡ですか?」

(2023年12月・静岡国道事務所 静川 淳 副所長)
「そうです。すごい力がかかっていたということがわかると思います」

(2023年12月・徳増 ないる キャスター)
「金属の部分が削れて少し変形しているのがわかります」

事故から2024年7月6日で1年。現場は、いま、どうなっているのか?改めて行ってみると…。

(2024年7月2日・佐野 巧 記者)
「事故現場です。橋げたが落下した部分は当時と変わらず、橋はかかっていません 。ほかの部分を見ますと、橋が架けられたところが増え、全体の工事は進んでいるように見えます」

立体化工事は、事故現場以外では、多くの場所で橋げたがかかり、工事が進んでいることが分かります。一方で、事故現場では、2023年7月に、落下した橋げたが撤去されましたが、工事自体は大きく進んでいる様子はありません。しかし、事故現場である橋脚の上に登らせてもらうと、2023年末にはなかった橋げたの姿が。

(2024年7月2日・静岡国道事務所 辻 英雄 副所長)
「こちらの橋げたは、現在、山側に仮設を予定している。落ちた桁というのは海側になるが、山側の方から先に橋げたをのせる工事を、いま準備している」

事故後、ずっとストップしていた落下現場の工事ですが、7月1日・月曜日から工事が再開されたのです。

(佐野 巧 記者)
Q.「(落下した)海側の橋げたと形やサイズは同じ?」

(静岡国道事務所 辻 英雄 副所長)
「構造や形状は大差ない」

1年前、この巨大な橋げたとほぼ同じサイズの橋げたが、ここから9m下の地上へ落下したのです。半年前には落下の際にできた傷が残っていましたが、それも新しいものへ取り換え作業が進んでいるといいます。さらに、落下した橋げたについても…。

(静岡国道事務所 辻 英雄 副所長)
「落下した桁は、落ちた衝撃での損傷があるため新しいものを製作している。その製作をしたものを、再度もう一度、ここにかけ直すということを予定している」

事故調査委員会によると、設計や工法に問題はなかったという結論でしたが、工事を担当する国道事務所と施工会社では、設計をもう一度見直すとともに、原因の一つとして指摘された土台の固定について、再発防止策を練ってきました。

(静岡国道事務所 辻 英雄 副所長)
「既設の橋げたと溶接で確実に固定している」「併せて溶接箇所との接合部分はボルトで確実に固定している」

事故当時は、それぞれが固定されていなかった土台を構成する部材が、今回はしっかりとボルトで固定されています。さらに、マーキングで緩みがないかを確認。また土台の水平が正しく取られているかも入念にチェックしています。

ようやく再開した事故現場での工事ですが、警察は、現在も、業務上過失致死傷の疑いで作業方法や安全管理に問題がなかったか捜査を続けています。

ところで、気になる開通はいつになるのでしょうか。

(静岡国道事務所 辻 英雄 副所長)
「東京方面については2026年の春の開通を予定していたが」「今回、4か月という期間、一部工事を止めていた。やはり、その期間を回復できるかというと、正直そこまでは至っていない」

静岡国道事務所では、上り線を2026年中に開通させることを目指すといいます。

(トラックドライバー)
「かなりの時間がかかっているから、なるべく早く開通してほしい。事故もあったのでしっかりやってほしい」

早期開通を求める声が強くある一方で、今回のような悲惨な事故は二度と起こしてはなりません。

(静岡国道事務所 辻 英雄 副所長)
「ますは、この事故を忘れないということを念頭において、この事故で得られた教訓を今後に活かし、まずは安全第一で、一歩一歩進んでいきたい」

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