先週、静岡・伊豆市の土肥海水浴場に隣接する公園に、津波避難複合施設がオープンしました。地震や津波など、もしもの時はもちろん普段は観光施設として利用できるということで、どういった施設なのか取材してきました。
伊豆市の土肥海水浴場に隣接する松原公園にオープンしたのは、津波避難複合施設「テラッセ・オレンジ・トイ」です。この施設のコンセプトは「普段使いできる津波避難タワー」。
普段はレストランや土産物店が営業する観光施設として活用し、地震や津波が発生した際には海岸にいる市民や観光客が逃げ込む津波避難タワーになります。伊豆市の土肥地区は、南海トラフ巨大地震で最大10メートルの津波が予想され、地震発生の6分後には沿岸部に津波が到着すると想定されています。そのため、海岸付近にいる観光客や市民が短時間で高い場所へ逃げられるようこの津波避難タワーが建設されました。
今回オープンしたタワーは、高さ18.8メートルの4階建て。3階から上が避難スペースとなり約1200人を収容でき、水・食料・簡易トイレやオムツなどが備蓄され、AEDや非常用の発電機も設置されています。
その一方で、普段は、市民や観光客の交流の場所として活用されます。1階には地元の新鮮な魚介類や野菜などを販売する土産物店やカフェがあり、3階のレストランでは「津波避難タワーの高さ」をイメージした「テラッセ オレンジ トイタワー風 海鮮飯」をはじめ、地魚を使った海鮮丼や寿司、定食などが提供されます。さらに屋上の「天空BBQ」では、タワーの高さを生かした土肥の絶景を眺めながら 肉や海鮮のバーベキューまで楽しめます。津波避難タワーを見学にきた地元の高校生は…。
(地元の高校生)
「避難タワーって 鉄骨があって階段めっちゃ登るみたいなだけのイメージだったんで、お店が入るっていうのはすごい新しいと思います」
観光と防災を兼ね備えた新しい施設の完成に、伊豆市の菊地市長は…。
(伊豆市 菊地 豊 市長)
「この海岸を夏だけではなくて1年中使いたいわけですから、そうすると1年を通して人も集まれるし、ここに避難施設がある」「普段使いながら普段の生活そのものが防災訓練になる」
設計を担当した東京大学の今井教授は、観光施設と津波避難タワーの融合は難しかったといいます。
(東京大学 今井 公太郎 教授)
「避難施設としての機能は果たさなきゃいけない。津波に対しての強度も保たなきゃいけないということもありながら、観光施設としての明るさや軽さも同時に実現しないといけないということで、非常に難易度の高い設計だったと思います」
この津波避難タワーには階段が4か所あり、早く駆け上がりたい人は勾配のキツイ階段を使い、高齢者や子どもには勾配の緩い階段も用意していて、誰もが安全に避難できるように配慮されています。また、この日は、ちょっと変わったコンテストも開催されました。
(防災イベント参加者)
「津波~!逃げて~!」
(防災イベント参加者)
「おーい!逃げろ」
災害時に大きな声で避難を呼びかけられるよう「大声コンテスト」が行われました。津波避難タワーと観光を融合させた新たな取り組み。今後、防災施設の有効な活用方法として注目されそうです。
2024.07.15