2024.10.30

【国内最高所で蒸留】南アルプス山中で仕込み開始後初のウイスキー完成…その仕上がりは?(静岡市)

ニュース 静岡市の最北部、南アルプスの山の中に蒸留所があります。ウイスキーの仕込みを始めて4年、最初のウイスキーが完成しました。大自然が育んだシングルモルトウイスキー、お酒のプロもうなされる仕上がりになったようです。

静岡市の最北部、南アルプスの山の中に蒸留所があります。ウイスキーの仕込みを始めて4年、最初のウイスキーが完成しました。大自然が育んだシングルモルトウイスキー、お酒のプロもうなされる仕上がりになったようです。

(発表会)
「ファーストリリースのお披露目でございます、どうぞ」

これは11月中旬に発売される静岡県内産のシングルモルトウイスキー。日本で一番高い場所にある蒸留所で作られています。

3千メートル級の山々が連なる南アルプス。

静図市街地から車で4時間あまり標高1200メートル、「井川蒸溜所」です。なぜ、自然環境が厳しい山奥に蒸留所があるのでしょうか?

(井川蒸溜所 瀬戸 泰栄 所長)
「対岸に木賊(とくさ)という場所がある、そこからかなり質のいい水が昔からこんこんと湧き出していて」「水がやはり一番大事で木賊(とくさ)の湧水を使おうと思ったらここしか平な所がない」

上質な水源があるほか、年間を通じて湿度が高く、気温が低いという気候条件がウイスキーの熟成に適していると言います。

「井川蒸溜所」は2020年11月に開業。積雪のある冬を除いた4月から12月の間、稼働し、年間7万リットルの生産能力があります。現在、所長を含め6人のスタッフがいて、それぞれの工程を受け持ちます。

原料となる麦芽を粉砕し、麦汁を取り出す工程。酵母を加えて発酵させアルコール成分を作る工程。化学的な分析作業も重要です。そしてアルコールを濃縮する蒸留、原酒の味が決まります。

蒸溜担当には、この夏、新しいスタッフが加わりました。2024年、大学を卒業した河村祥真さんです。

(2024年度入社 河村 祥真さん)
「もともとウイスキーが好きで、この会社でウイスキーをつくりたいということで入った、本当に入ってよかったと思っています」

スタッフは、全員、南アルプス登山の玄関口にある「椹島ロッヂ」に寝泊まりしながら、蒸留所に通っています。それぞれ個室は与えられていますが、食事や風呂など一日のほとんど、共同生活を送っています。

(2024年度入社 河村 祥真さん)
「歳で言うと、自分の父親と近い年齢の方が多いので、子どものように接してくれて気にかけてくれて、分からないことだったり、普段の生活のことも気にしてくれる不便なことはないと思っています」

井川蒸溜所で仕込みを始めてから4年。約230の樽が熟成から3年以上経過しました。これまでにも、熟成から3年未満のものを「ニューボーン」としてリリースてきましたが、ジャパニーズウイスキーとして売り出すには、3年以上熟成していなければなりません。この秋、初めてウイスキーを出すのにあたり、所長の瀬戸さんは、2か月にわたり試行錯誤を重ね、理想のウイスキーを追求してきました。

(井川蒸溜所 瀬戸 泰栄 所長)
「(樽には)一個一個、個性があるので、その中からどれとどれを選んだらバランスが良くなるかというのと、あとは、作りたいターゲットの製造量があるのでそれをカバーするため何樽分、あけるのか、樽出ししたらぴったりの量になるのか味のバランスと量を計算しながら混ぜていく」

完成までに50以上の試作品をつくりました。味を見るのに飲みこむことはありませんが、アルコール度数が60度近くある原酒を口に含むため、体にも負担がかかると言います。出来上がったウイスキーはどんな味なんでしょうか?

(井川蒸溜所 瀬戸 泰栄 所長)
「圧倒的に甘い、そこから途中にビターな感じがきて、苦味があるので味がしまる、その余韻に華やかさ、フルーティーで、お花畑が感じられるのが特徴とても雑味のないきれいな味」

そして、出来上がったウイスキー。発表会には、県内のバーや酒の販売店など約100人の関係者が参加し、味を確かめました。

(テイスティングした参加者)
「甘味もすごくのっていますし、3年熟成には思えない非常に品のある華やかなウイスキー」

(テイスティングした参加者)
「ニューボーンからおいしくて、初めてウイスキーに仕上がって本当においしい」

(テイスティングした参加者)
「まだ3年というのは、ウイスキーとしては本当に若い。これから10年、12年寝かしてた先に楽しみを感じる」

このウイスキーづくりは、特種東海製紙のグループ会社「十山」が、製紙業で使っていた南アルプスの広大な森林を有効活用しようと始めました。全くの異業種から参入、やっとスタートラインに立ったと鈴木社長は話します。

( 特種東海製紙グループ 十山 鈴木 康平 社長)
「3年経たないとウイスキーと呼べない中では、本当に私たち、スタートに立ったところ、これから12年もの、17年もの長期熟成に向けて、より一層、南アルプスの自然がぎゅっと詰まったウイスキーづくりを目指していきたいと思っています」

今後も、半年ごとに新たなボトルをリリースする予定です。大自然が育んだウイスキー、南アルプスの魅力を全国に発信することが期待されています。

この記事をシェアする