静岡・富士市で男性を金属バットで殴り殺害した罪に問われた男の裁判員裁判で、地裁沼津支部は懲役7年の実刑判決を言い渡しました。覚せい剤使用後の犯行で、被告の「責任能力の有無」が争点となっていました。
2021年5月、富士市。事件はこの草木が生い茂った一軒の住宅で起きました。
(松永 健太郎 記者)
「富士市内の閑静な住宅街です。あちらに見える青い家の中から男性が頭から血を流して倒れているのが発見されたということです」
当時、この家に住んでいた被告の男。事件前、被告は友人で当時37歳の男性と覚せい剤を使用し、その後、金属バッドでこの友人を殺害。被告は殺人の疑いで逮捕・送検されていましたが…。事態が動いたのは2022年1月。地検沼津支部は被告の犯行当時の責任能力に問題があると判断し、不起訴処分としたのです。その一方で、被告は、覚せい剤取締法違反の罪などで起訴され、懲役1年6か月の実刑判決を言い渡されました。
殺害された男性の遺族は、殺人罪について不起訴となったことを不服として検察審査会に審査を申し立て、2022年10月、検察審査会は「不起訴不当」と議決したのです。これを受け、地検沼津支部は、「議決を真摯に受け止める」として、一転、殺人罪で起訴。起訴内容を“被告が、男性の頭や顔などを金属バットで複数回殴るなどして殺害した”とし、裁判で争うことになりました。
この裁判の最大の争点は当時の“被告の精神状態”。弁護側は「正常な判断ができず『心神喪失』だった。刑事責任が問えない」として無罪を主張していた一方、検察は「自ら警察に通報していた。正常な判断能力が残っていて『心神耗弱』だった」と主張していました。
そして、25日の判決公判。野澤晃一裁判長は、判決理由の中で、争点となっていた被告の精神状態について「覚せい剤の使用による幻聴などの影響で殺害に及んだが、被告の反社会的な性格に基づく選択で、『心神喪失』ではなく『心神耗弱』だった」と述べました。また、「強固な殺意に基づく危険で残忍な犯行で、結果は重大」として、懲役7年の実刑判決を言い渡しました。
2024.06.25