【南海トラフ巨大地震】<前半>新しい被害想定発表 静岡県内はどうなる? ~静岡県内の死者10万3000人と微減にとどまる~
東日本大震災から14年、あの時の教訓をいかせるのでしょうか…? 私たちに待ち受けるのは、「南海トラフ巨大地震」。国はマグニチュード8から9の巨大地震が、30年以内に80パーセント程度の確率で発生すると予測しています。国は、被害の想定を2012年から13年にかけて公表。最悪の場合、死者は全国で32万3000人、県内の死者数は最大10万9000人と、極めて甚大な被害が出ると想定されたのでした。
この被害想定発表から10年余り。国が見直しを進め、きょう新たな被害想定を公表しました。
まずは各市町の最大震度です。西部・中部を中心に震度7。東部・伊豆では、震度6強から6弱の揺れが襲う見込みです。熱海市のみ震度が6弱に変更となりました。
続いて津波の最大の高さと、1メートル以上の津波が最短で到達する時間です。西部で浜松・磐田・袋井で前回より高くなり、各地で到達時間も早くなりました。
次に中部。静岡市駿河区と焼津で前回より津波高は低くなる見込みに。また清水区と焼津市は、全国でも最速の2分で津波が到達する見込みは変わっていません。
最後に東部・伊豆下田市は前回より2メートル低い31メートルの想定となりました。伊豆ではわずか数分で高い津波が押し寄せる想定は変わりません。
東日本大震災や前回の想定から10年余り。国は、死者数を8割減らすと方針を打ち出し、津波避難施設の設置や、建物の耐震化など対策が進められました。その効果はどこまであったのか…?
今回見直された想定では、全国の死者数は最大29万8000人。県内は、最大10万3000人といずれも前回より減少する試算となりました。ただ、国が目指す死者数の8割減少からはほど遠い数字でした。
続いて、建物の被害。全壊や焼失すると想定されるのは、全体で235万棟と微減。内訳では「火災」と「津波」は増加。津波は浸水域が見直されて拡大したことが要因だといいます。一方、県内は全体が34.6万棟とおよそ3万棟の増加。「揺れ」や「津波」はほぼ横ばいだったものの、「火災」の被害が大幅に見直されました。そしていずれも、国が目指す「5割減少」からはほど遠い数字でした。
このほか、大きく見直されたのが避難者数。全国で最大950万人という前回の試算から、1230万人まで膨れ上がりました。停電被害などを追加で考慮したことなどが、増加の要因です。静岡県内では、震災から1か月後、最大で159万人が避難すると想定されました。県民の実に2.2人に1人は、避難するという計算になります。
続いて、情報通信面です。県内の固定電話の回線は前回よりも厳しい想定で、発災直後に90パーセントが通じなくなります。携帯電話も、発災直後は大部分の通話が困難となり、発災1日後には非常用電源が切れて、基地局の83パーセントが停波します。
項目ごとに増減がみられた今回の被害想定。このうち浸水被害について、国は、「海岸堤防や津波避難施設の整備状況を考慮している一方、詳細な地域条件は反映できていない」と話し、必ずしもこの想定が地域の実情にあっていないケースがあると説明しています。
このほか、今回新たに想定されたのが、「災害関連死」。全国で死者は、2万6000人から5万2000人と想定されました。
また、西側と東側で、巨大地震が時間差で起きる、いわゆる「半割れ」の被害も新たに想定。津波による死者が減少する一方、建物被害については、全壊する建物が増えると発表しました。
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ここからは、静岡大学特任教授 岩田孝仁さんとお送りします。(詳しくは動画をご覧ください)
(伊藤薫平キャスター)津波の被害想定の変更内容や、県内の死者数が10万3000人と、都道府県ごとで最も多い数字となっていることについて?
(岩田孝仁特任教授)厳しい現実を突きつけられた。震源域が広域なうえ、静岡県は震源域の真上にある。津波もすぐ到達する。これまで犠牲者を減らす努力はしてきたが、なかなか減っていかないのが現実。
(津川祥吾アンカー)犠牲者の6000人減は、それはそれで大きな数字だが、防潮堤の整備は効果を発揮しないのか、整備が途中だからか?
(岩田特任教授)防潮堤は、最大クラスのレベル1(数百年に1度)に相当する地震の対応を求められている。まだ整備されていないところもある。そういうところは、犠牲者が多数出る、という現実を突きつけられた。
(伊藤キャスター)全壊・消失のたてものが、前回想定より増えた。避難者は、40万人近く増えて158万人に増えたが・・・
(岩田特任教授)ライフラインが途絶えて、避難せざるを得ない人が増えてくる、ということが想定に含まれているようだ。いろんな準備をしていても、外からの供給が途絶えると生活ができない、という数も含まれている。
(津川アンカー)この10年間、県や市町、県民も努力をしてきたと思うが、この現実を突きつけられて、足りていないことは何?
(岩田特任教授)各自1週間備蓄をしようと呼び掛けているが、実際にはそこまで到達していない。耐震化も進めているが、まだ100%完璧ではない。もう1つは、目標としている基準が、阪神淡路大震災以前の基準を目標としているが、2000年に改正された建築基準法に適合しないと、震度6強や震度7には耐えられない。
もっと高い基準で目標を設定しないと、被害の数は減らない。、